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日本学術振興会「ADVENTURE」プロジェクト内
サブプロジェクト「DDMによる大規模非線形FEM」
担当:野口裕久(慶應義塾大学), 宮村倫司(東京大学)
本サブプロジェクトでは、数10TFlops級のMPPにより1000万自由度程度の固体の非線形解析を、実用的な時間内で行えるような汎用有限要素法コードを開発することを最終目的とする。
平成9年度の目標は100万自由度程度の微小変形弾塑性解析である。並列計算手法としては領域分割法(DDM)を用いる。弾塑性解析のアルゴリズムとしては、(1)後退型Euler法による応力積分、(2)それにconsistentな接線剛性を用いたNewton-Raphson法による収束計算、を採用する。
○領域分割法
本手法では解析対象をいくつかの部分領域に分割し、各部分領域を適当な境界条件の下で有限要素法により解析する。各部分領域を複数のプロセッサに動的に割り当てて並列的に解析を行う。隣り合う部分領域間の境界上の節点の自由度は未知数であり、共役勾配法等により反復的に解く。解が収束するまで部分領域についての解析は繰り返し行う。本手法ではプロセッサの負荷分散が動的に行えるという特徴がある。
領域分割法と呼ばれる方法の中には、部分領域についての有限要素解析を行わない方法もある。この方法では、全自由度に対して共役勾配法等の反復解法を適用する。部分領域は内積等の計算を並列プロセッサに割り当てるために用いられる。この手法では部分領域間の通信が必要となる。本研究ではこの手法は用いない。
○後退型Euler法による応力積分
弾塑性構成式は速度型であり、有限な時間増分に対する応力積分の理論解を得るのは困難であるため、各種の近似的な応力積分法が提案されている。本研究では、流れ則を後退型Euler法により積分して、塑性歪増分を求める方法(Elastic predictor-Radial corrector法)を用いる。歪速度が一定かつ偏差応力ベクトルの向きが変化しない場合には、この方法により理論解が得られる。その他の場合にも誤差が少ないことが確認されており、比較的大きな増分幅をとることができる。
○consistent接線剛性
Elastic predictor-Radial corrector法による応力積分にconsistentな接線剛性を用いれば、Newton-Raphson法は二乗収束する。すなわち、接線剛性行列を計算する時に、(1)増分ステップでは速度型の弾塑性構成式をそのまま用いる、(2)収束計算時には多少の修正を加えた構成式を用いる。
塑性不安定, 座屈解析, 分岐解析, 弧長法による経路追跡, 感度解析等の汎用コードとして必要な機能を順次追加する。
数百万から1000万自由度の問題が解けるようなコードを開発する。
宮村倫司:miyamura@garlic.q.t.u-tokyo.ac.jp
野口裕久:noguchi@sd.keio.ac.jp
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最終更新:平成10年3月4日